「動くなっっ!!」
「パァンッッ・・・」
・・・あーあ、あっけない最期だったなあ。高校を中退し、ふらふらしていたところを兄さんに拾ってもらいここまでずっとついてきた。正直、自分の命なんて惜しいともなんとも思っていなかったが、いざ死ぬなると何だか急に惜しくなってくる。しょうもない抗争に巻き込まれてしまったもんだ。・・・いや、この道に入った以上、いつかこうなることは分かっていたんだ。兄さんは無事逃げられたろうか。それだけが気がかりだ・・・・・・。
・・・・・・それにしてもこの銃弾・・・、いつになったら俺を打ち抜くんだろう・・・。放たれた銃弾は俺の眉間まで1mぐらいのところで止まっている。銃弾だけではない、俺を撃った奴、その取り巻きの組員、空に見える鳥の群れ、風にあおられていたポスター、そして俺自身も・・・。そういえば、聞いたことがあるな。身の危険を感じると時間の流れを遅く感じることがあると。銃弾の動線を考えると、俺の額を真っ直ぐに貫くように思える。死を覚悟した俺の脳が、この止まっているようにも見えるスローモーションを俺に見せているのかもしれない。まあ、それも時間の問題だろう・・・・。
・・・・・あー、あいつ左頬にほくろあるんだー、俺と同じかよ・・・・・・・・・いや、全然動かねーな!体感で一時間は立った気がする。それでも一向に景色は変わらない。死ぬ瞬間を悟った先人たちは皆こんなに長い”死に際”を過ごしていたのか?どうせ動けないし死ぬだけなんだから、もうさっさと貫いてくれ。奴らの顔も見飽きたもんだ・・・。
・・・うん、それじゃあ、人員配置をケース572に合わせて改めて最適化して、資源物資の量を先行例の0.985倍、3年スパンで補正係数に変化を・・・・・・・。・・・どれだけの時が経ったのだろうか。銃弾は数cmほど近づいたようだが、相変わらず空中に浮遊したまま俺を狙っている。無限に感じられる時間を使い、俺は世界を知ろうとしていた。ろくに勉強をしてこなかったものだが、ひょっとしたら考えるということが性に合っていたのかもしれない。余りある時間の中で、ひたすら脳内シュミレーションを繰り返した俺は、この世界の流れ、仕組み、真理を解き明かそうとしていた。
・・・・・・・・理解した・・・・。俺は世界を理解したのだ。果てしない時間が経ったのだろうが、すでにその感覚は無くなっていた。ついに弾丸は俺の額に接触していた。・・・もう、やることも何もない。全てを理解した俺は全てを受け入れ、ただただその時を待った――――。
「おい!お前は逃げた奴を終え!」
「へいっ!!」
「かしら、こいつの顔見てくださいよ。何だか満足気に見えますぜ。」
「ふん、そうか?何があったかも分からぬ間におっ死んだわけだがな。」
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