10の質問

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「テンキュー?なに?急にありがとうって」
「違う違う~。”Thank yoテンキューu” じゃなくて “10Qテンキュー“。我々の総力を挙げて作ったアプリなのです。」
加奈が鼻息荒く話しかけてきた。加奈はパソコン部の部長で、日夜アプリの開発に明け暮れている(らしい)。
「凄いんだぞ~。何でもお見通しって感じなんだから。そうだ、あたしのスマホでちょっとやってみてよ!」
加奈から渡されたスマホを見ると”10Q”というタイトルの文字、森を背景にその下でニット帽をかぶった小人のおじさんが”START”と書かれた看板を持っている。時折目がギョロギョロっと動いてちょっと気持ち悪い・・・。画面右下に表示されている”遊び方”を押してみる。画面が切り替わり、眼鏡をかけた小人のおじさんが黒板に文字を書きだした。
「なになに・・・、”ーQ爺の遊び方講座ー・・・はじめに、人物やキャラクターを思い浮かべてください。実際に存在している人でもいいし、架空の存在のキャラクターでも構いません。・・・・・・思い浮かべましたか?これから私が10の質問をします。あなたは思い浮かべたものについて、私の質問に”はい”・”いいえ”・”どちらでもない”で答えてください。10の質問後、あなたが思い浮かべたものを当てて見せましょう。”・・・か。」
どうやら、思い浮かべたものを質問で絞っていって、当てるというアプリらしい。
「ひかり、決めた?なんだろなー、なんだろうな~?」
「うーん・・・。よし、じゃあ加奈もおじさんと一緒に考えてみて。」
そう言ってスタート画面に戻り、”START”を押した。Q1.・・・―――。

―――”それは、【わたし(Q爺)】ですね。登場回数1回”
・・・・・・見事に当てられた。Q爺が看板に答えを書き終え、再び目をギョロギョロさせている。加奈が隣でニヤニヤしている。
「ひかりったら~、最初から意地の悪い答えにしちゃって(笑)でも、凄いでしょ!ほんとに何でも当てちゃうんだから。そうだ!ひかりのスマホにもダウンロードしてあげるよ!」
そう言って加奈は自分のスマホと机に出ていた私のスマホを勝手にいじり(なぜかパスワードを知っている)、アプリを転送しだした。まったく、勝手なんだから・・・、でもちょっと面白かったな。その時、ちょうど授業開始を告げるチャイムが鳴った。教室に戻らなくては!
「・・・あれっ?・・・しまった、・・・あっ、ちょっとひかり!」
「加奈、ありがと!また後でね!」
加奈からスマホを取り上げ、自分の教室へと戻った。

次の授業は生徒指導部の田中先生の英語である。チャイムぎりぎりでの到着、小言の一つも言われるかと思ったが、教室の前方に見えたのは先生のしかめ面ではなく、”自習”の二文字だった。
「ふぅ~そうだった、そうだった。今日は英語自習って言ってたっけ。」
ゆっくりと自分の席に着く。周りのほとんどは、友達と喋っているか、スマホをいじっているかだ。空席も目立つ。文化祭が近いので、部室にこもって準備をしているのかもしれない。スマホを取り出し、さっき加奈が転送した”10Q”をタップする、・・・・・・?さっきとは違い、画面背景がお墓でなんだかおどろおどろしい。しかもタイトルを見ると”10Qホラー“となっている。
「さっきのアプリの派生版かな?」
加奈が違うアプリを入れちゃったのだろうか?ただ、”遊び方”を見る限り、先程のアプリと変わりない。
「ひとまず遊んでみよう。」
今回のお題は既に決めていた。【自分】だ。加奈が聞いたら”また意地悪だな~”なんていわれそうな気もするが、どう当ててくるのかが気になった。”実際に存在している人”だから問題ないはずだ。看板の”START”を押した。

Q1. それは実在しますか。―はい
Q2. それは人ですか。―はい
Q3. それは女性ですか。―はい
Q4. それはあなたのことを知っていますか。―はい
順調に絞られている気がする。
Q5. それはあなたの親ですか。―いいえ
Q6. それはかわいいですか。―・・・はい(笑)
Q7. それはあなたより年下ですか―いいえ
Q8. それはあなたですか―はい
・・・あーあ、当てられちゃった。まだ二つも質問が残っているのに・・・、ちょっと悔しい。はいを選択して次に進む。


Q9. それは授業をさぼってアプリで遊んでいますか?
「・・・えっ・・・。」
声が出た。後ろを振り返る。周りの生徒たちは相変わらずおしゃべりをしていたりスマホをいじっていたり寝ていたり・・・。
どういうことなのだろう?少し震えている指で”はい”を選択する。


Q10. それは思わず後ろを振り返り、指を震わせながらボタンを押しますか?
            「いやっっっっ!」

教室の注目を集める。皆怪訝な表情でこちらを見ている。視線が怖くなり、スマホに目を戻すと画面がひとりでに変わった。

”それは【宮野ひかり】ですね。登場回数84753879374397回”
Q爺が出てきた。しかしその顔は狂気を孕み、ギョロギョロと血走った目を忙しなく動かしている。

        ”い つ も 視 て い る ぞ。”
「いやああああああああああっっっっっっ!!!!!!!」
思わず教室を飛び出した。階段を駆け下り、部活棟の廊下を走り抜ける。すれ違う人がこちらを見ている。
        「やめて!見ないで!!」
部室から漏れ聞こえる声は、まるで逃げ場のない獲物が逃げ惑う様子をせせら笑っているかのようだった。
        「やめて・やめてよ・・・・。」
がむしゃらに走った。ここにいちゃだめだ、監視されている。逃げなきゃ、逃げなきゃ。
            「危ない!!!」
突如声が響いた。ハッと我に帰り前を向く。校門前の丁字路、赤信号。視界にボンネットが映った。

道路に放り出されたスマートフォンがメッセージを知らせている。
”ゴメン、、、さっきのアプリ、今度の文化祭用のやつを入れちゃった(゚Д゚;)”
”やってみたでしょ( ´艸`)部員が教えてくれたよ!(^^)!”
”実はそのアプリ、スマホのカメラ機能とリンクしてて、プレイヤーの状態に合ったレスポンスをリアルタイムで送れるんだ♪部室にいたメンバーはひかりの反応で盛り上がってたみたい(*’ω’*)”
”でも、大丈夫だったかな・・・?ひかり怖がりなとこあるから・・・(‘Д’)”
”調整中のベータ版だから、実はまだ誰もプレイしたことがなかったんだよね・・・(-_-)後で感想教えてね!(”◇”)ゞ”




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